食塩感受性と食塩非感受性

高血圧の改善には、減塩が大切なことは確かですが、減塩すれば誰でも血圧が下がるというのは誤りです。 人間の体質には、血圧が食塩に敏感に反応する「食塩感受性」と、反応しにくい「食塩非感受性」という2つのタイプがあります。 食塩感受性のある人は、腎臓の働きに異常が生じ、塩分をうまく排泄できなくなっているため、 ナトリウムが体内に蓄積され、血圧が上昇するのですが、食塩非感受性の人は腎臓の働きがよく、 体内の余分なナトリウムは速やかに排泄されるため、食塩を摂っても血圧がほとんど上昇しないのです。 したがって、食塩非感受性の人が減塩食を厳しく行っても、高血圧を改善することはできません。 また、塩分の摂取と排出のバランスが取れているので、高血圧治療薬の利尿薬を服用しても、あまり血圧が下がりません。



■塩分摂取量

塩分摂取量が多いと血圧が高くなる

高血圧と診断されると、「塩分を控えなければならない」と考えている人が多いのではないでしょうか。 実際に、病院で行われている高血圧の治療では、血圧を下げる降圧薬の服用と共に、 塩分の摂取量を厳しく控える減塩食がすすめられます。 食塩を過剰に摂ると、その主成分であるナトリウムが体内に多くたまります。 ナトリウムには水分を取り込む性質があるため、血液中の水分が増えて血液の量が増えます。 すると、血管内の圧力が高まり、血圧が高くなってしまうのです。

これまでの疫学調査(統計を使った医学の専門調査)でも、食塩摂取量の多い地域ほど高血圧になりやすいことが、 数多く報告されています。中でも有名なのが、米国の高血圧学者であるダール博士が行った調査です。 ダール博士は、戦後間もない日本で食塩の摂取量と高血圧の関係を調べました。 その結果、当時、1日あたり27gの食塩を摂っていた東北地方と、1日あたり14gの食塩を摂っていた南日本を比較したところ、 東北地方のほうが圧倒的に高血圧にかかる人の多いことがわかったのです。 また、世界的に見ても、食塩摂取量が多い地域ほど平均血圧の高いことが確認されています。 ちなみに、ある調査によれば、健康を維持するために必要な食塩の最小摂取量は、 1日あたりわずか0,5~1.3gと報告されています。 先進国に暮らす人々の食塩の摂取量は約10~15gですから、いかに私たちが塩分を摂りすぎているかがわかります。


■食塩感受性と食塩非感受性

塩分を摂っても血圧が上昇しない人も多い

塩分を過剰に摂取すると血圧が上昇するのは前述の通りですが、しかし、個別に高血圧の患者さんを見ると、 必ずしも食塩を摂っても血圧の上昇しない人が数多くいます。 このことは長年、研究者の間でも疑問視されていました。 そして近年、東京大学医学部教授の藤田敏郎博士の研究によって、高血圧の患者さんの中には、 血圧が食塩に敏感に反応する「食塩感受性」と、反応しにくい「食塩非感受性」 という2つのタイプの人のいることが報告されたのです。 食塩感受性は、決して特異なタイプではありません。高血圧患者の9割を占める本態性高血圧の患者さんのうち、 食塩感受性のある人は約4割、食塩非感受性の人は約6割いるといわれています。 食塩感受性のある人と食塩非感受性の人の違いは、腎臓の働きにあると考えられています。 食塩感受性のある人は、腎臓の働きに異常が生じ、塩分をうまく排泄できなくなっているのです。 そのため、ナトリウムが体内に蓄積され、血圧が上昇します。 一方、食塩非感受性の人は腎臓の働きがよく、体内の余分なナトリウムは速やかに排泄され、 食塩を摂っても血圧がほとんど上昇しないのです。

食塩感受性と食塩非感受性を分ける定義は研究者によって異なりますが、いずれも減塩食を一定期間摂った後に高塩食を摂り、 血圧が大幅に上昇した場合に食塩感受性があると判断します。 ちなみに古典的な定義では、まず1日当たりの食塩摂取量を0.5g程度に抑えた減塩食を1週間続けます。 そのあとに1日当たりの食塩摂取量が14.6g程度の高塩食を1週間行ったときに、平均血圧が10%上昇したら、 食塩感受性があるとされています。